退職所得控除とは — 勤続年数で決まる退職金の非課税枠
退職所得控除とは、退職金にかかる税金を計算するときに差し引くことができる控除で、勤続年数が長いほど大きくなります。退職金は控除を引いた残りをさらに1/2にしてから課税されるため、税負担が軽くなります。
控除額は、勤続20年以下なら『40万円 × 勤続年数』(最低80万円)、20年超なら『800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)』です。たとえば勤続30年なら1,500万円、勤続38年なら2,060万円が控除されます。退職金がこの控除額以内なら、税金はかかりません。
課税される場合も、控除後の金額を1/2にしてから所得税(累進+復興特別所得税)と住民税10%を計算します(分離課税)。給与で同額を受け取るより手取りが多くなる、優遇された仕組みです。受取時には「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出することが重要です。
控除額の早見:勤続10年で400万円、20年で800万円、30年で1,500万円、38年で2,060万円。退職金がこの額以下なら所得税・住民税ともにかかりません。勤続年数の1年未満の端数は切り上げます(20年3か月→21年)。
計算例:勤続30年・退職金2,000万円の場合、控除1,500万円を引いた500万円の1/2=250万円が課税退職所得。所得税は速算表で250万円×10%−9.75万円=15.25万円、これに復興特別所得税2.1%を加えて約15.6万円、住民税は250万円×10%=25万円。手取りは約1,959万円です。
iDeCoの一時金受取もこの控除の対象です。会社の退職金と同じ年(前後の一定期間を含む)に受け取ると勤続期間の重複分を調整して控除が減るため、iDeCoを先に受け取り数年空けてから退職金を受け取る、といった順序の工夫で税負担が変わります。受け取り前に金融機関や税理士に確認しましょう。
勤続年数と退職所得控除額
20年以下は年40万円(最低80万円)、20年超は800万円+年70万円。1年未満の端数は切り上げ。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 38年 | 2,060万円 |
よくある質問
Q. 退職金は総合課税ですか? A. いいえ。他の所得と合算しない分離課税で、控除後の1/2にだけ課税されます。給与で同額を受け取るより大幅に有利です。
Q. 「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなりますか? A. 控除が適用されず、退職金全体に20.42%が源泉徴収されます。確定申告をすれば取り戻せますが、退職時の提出を忘れないでください。
Q. 勤続5年以下の役員は? A. 役員等として勤続5年以下の場合は1/2課税が適用されません。一般従業員でも勤続5年以下で控除後300万円を超える部分は1/2になりません。
出典・最終確認
国税庁「退職所得の源泉徴収税額の速算表(令和8年分)」。最終確認:2026年9月7日。制度は改正されることがあります。実際の判断は最新の公式情報でご確認ください。
「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れると、退職金に一律20.42%が源泉徴収され、多くの場合払い過ぎになります。その場合は確定申告で取り戻せますが、退職時の提出を忘れないようにしましょう。

